【映画評】ライフ・オブ・パイ / トラと漂流した227日
アン・リー監督の最新作である「ライフ・オブ・パイ / トラと漂流した227日」を見に行った。スペイン語のタイトルは「Una aventura extraordinaria(あり得ない/とんでもない冒険)」なのだが、このタイトルのほうがこの映画のテーマにあっているなと思う。
ずっと彼の映画のファンなので、とても楽しみにしていた。英国紙ガーディアン紙で、3D映画であることを意識して作ったと語っていたので、それを確かめるべく3Dで鑑賞した。
見を終わった感想は「これはやはり3Dで見るべき映画」ということと、最後のシーンとそれまで語られたことに対して、どうにもやりきれない気持ちが残り、「真実とは?」ということについて深く考えさせられる。(特に映画の冒頭のシーンでたくさんの動物が出てくるが、3Dで見るとまるで自分が動物園にいるかの気分にさせられる。3Dならではの奥行きを活かした画作りが成功した例と言える)
そして、真実が残酷であるならば、真実を伝えること自体になんの意味があるのかということについても考えさせられる。
アン・リー監督の作品で好きな作品はたくさんあるけど、個人的にはロード・オブ・ザ・リングのイライジャ・ウッドやクリスティーナ・リッチなどが出ている「アイス・ストーム」という作品がとても好きだ。グリーン・ディステニーなどの大作に比べるととても地味な作品だが、アン・リー監督のストーリー・テラーぶりが光り、印象的な作品となっている。
「ライフ・オブ・パイ」でもその手腕は活かされ、3D映画による圧倒的な映像美に加え、その映像に隠された真実のストーリーを最後に浮かび上がらせる。
ジェイムズ・キャメロン監督の「アバター」以来、ようやく3Dで見るべき価値のある映画と言える。
この映画のテーマは色々とあると思うが、最終的には「人間賛美」といえると思う。もっと詳しく述べると、「人間の想像力の素晴らしさ」だ。「真実とは何か?」と追求することは詮無いことで、それをも凌駕する想像力があれば、どんなに辛い現実でも人間は耐え抜き、それに打ち勝つことが出来るということだろう。
まだ2013年は始まったばかりだけど、この映画は今年ベスト3には入る映画だと思っている。必見です。
(どうしても結末が気になった人は、原作を読むことをお薦めします。とても読みやすく、英語学習者にも最適な本かと)
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- そして父になる:奇跡について(2014.02.13)
- 【映画評】ライフ・オブ・パイ / トラと漂流した227日(2013.01.20)
- ゾンビ映画を哲学的に語ってみた:ウォーキング・デッドに寄せて(2012.09.20)
- お薦めの洋画3本:英語学習のために(2012.04.26)
- 映画評:Eat Pray Love<食べて、祈って、恋をして>(2011.12.28)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント