悲情城市の街:宮崎駿と侯孝賢を結ぶ点
高校生の頃、同級生にモリくんという仲の良い友だちがいた。
彼は侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の「悲情城市」という映画が映画史上に残る最高傑作だから見るべきだと言い張った。彼の言葉に従い、その映画を見たのが人生で初めて台湾という国を意識したときかもしれない。
個人的にはほぼ同時期に見た陳凱歌(チェン・カイコー)の「さらば、覇王別姫」という映画のほうが印象深かったが、それでも「悲情城市」で描かれた九份(キュウフン)という土地はとても印象に残った。
街全体が迷路のように入り組んでおり、一歩メインストリートから外れると、迷子になってしまう。アジア的というよりはどこかヨーローッパの風情を感じさせる街並みだ。
九份へは台北のMRT忠生復興駅からバスで1時間ほどで行ける。台湾屈指の観光スポットだけあって、たくさんの観光客で溢れかえっている。そのなかの何人が「悲情城市」という映画を知っているのだろうか?日本人の観光客にとっては宮崎駿の「千と千尋の神隠し」のモデルとなった土地というイメージのほうが強いかも知れない。
もしかしたら、宮崎駿も「悲情城市」を見て、興味を持ったから自分の映画の舞台に使ったのかも知れない。そんなことをあれこれ夢想しながら、この街を歩いた。
台湾人の極め細やかなセンスはどこか日本人と相通じるものがある。
「悲情城市」という映画を観てから20年近く経ったが、その舞台となった土地に来るとは当時からは想像も出来なかった。モリくんとはしばらく会っていないが、今度会ったら自慢出来ることがひとつ増えた。それだけでも来た甲斐があったというものだ。
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